事例No.033住宅性能評価制度について
デザイン
住宅性能評価制度についてご案内します。
住宅性能表示制度は平成12年4月1日に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づく制度です。
その法律のなかで住宅の性能をわかりやすく表示する「住宅性能表示制度」が制定されました。
新築住宅だけでなく既存住宅にも利用できます。
お住まいを客観的に判断する指標になりますので、ご興味のある方はお問合せください。
住宅の性能評価は10の分野で、それぞれ数値化され表示されます。
1 地震に対する強さ
2 火災に対する安全性
3 柱や土台などの耐久性
4 配管の清掃や更新対策
5 省エネルギー対策
6 シックハウス対策
7 窓の面積
8 遮音対策
9 高齢者や障害者への配慮
10 防犯対策
上記10の項目をそれぞれ見ていきたいと思います。
1 地震に対する強さ
耐震等級により建物の地震に対する強さを表しています。
耐震等級には1~3があり、「耐震等級1」は建築基準法をクリアしている建物になります。
その耐震基準は下記の内容となっています。
損傷防止
数十年に一回は起こりうる(一般的な耐用年数の住宅では1度は遭遇する可能性が高い)大きさの力に対しては、大規模な工事が伴う修復を要するほどの著しい損傷が生じないこと
倒壊等防止
数百年に一回は起こりうる(すなわち、一般的な耐用年数の住宅では遭遇する可能性は低い)大きさの力に対しては、損傷は受けても、人命が損なわれるような壊れ方をしないこと
「耐震等級2」は等級1で耐えられる地震力の1.25倍の力に対して倒壊や崩壊等しない程度を示しており、「耐震等級3」では1.5倍の力に耐えることができます。
※地震以外に耐風等級1・2と耐積雪等級1・2があり、地震と同じく損傷防止と倒壊等防止についての基準があります。
2 火災に対する安全性
この基準では、火災が発生した際に「人命が守られること」と「財産が守られること」の2つの大きな目標で捉えることとしています。
上記の2つの目標を達成するための対策としては、それぞれ、次のものが考えられます。
人命や身体が守られること
●出火を防止すること
●安全に避難や脱出ができるようにすること
財産が守られること
●出火を防止すること
●外壁、床、屋根などが火に強いこと
上記の内容の基準として下記があります。
感知警報装置設置等級
火災の早期発見のしやすさを、等級4~1で分けています。
避難安全対策(他住戸火災時・共用廊下):共同住宅のみ
他住戸の火災発生時の避難を容易にするために、廊下に講じられた対策を等級別にしています。
以上のものとは別に、脱出対策や耐火等級による判別もされています。
3 柱や土台などの耐久性
この基準は、材料の劣化の進行を遅らせるための対策がどの程度講じられているかを評価するものです。
劣化対策等級(構造躯体等)
●構造躯体に使用する材料の交換等大規模な改修工事を必要とするまでの期間を伸長するために必要な対策の程度を等級3〜1で表示します。
●等級3では、通常想定される自然条件及び維持管理条件の下で3世代まで伸長するため必要な対策が講じられているかを示しています。等級2の場合は2世代となります。
(1世代とは25年〜30年です)。
●等級1は、建築基準法の規定を満たしていることを意味します。
住宅の構造別にポイントを整理すると次のようになります。
木造の場合
木材は、腐朽菌によって腐ったり、シロアリに食べられたりして劣化することがあります。木造の場合はこの2種類の劣化を評価します。
鉄骨造の場合
鋼材は、水などによって錆びて劣化します。鉄骨造の場合は錆による劣化を評価します。
鉄筋コンクリート造の場合
鉄筋コンクリートは、コンクリートの中に入っている鉄筋の劣化と、コンクリートの水分が凍って膨らみ、コンクリートが傷み劣化します。鉄筋コンクリート造の場合は、この2種類の劣化を評価します。
4 配管の清掃や更新対策
耐用年数が長い構造躯体に比べて、比較的耐用年数が短い配管などの劣化の進行を遅らせるための対策について等級を分けています。
維持管理対策等級(専用配管)
●専用部分の給排水管、給湯管及びガス管の維持管理(清掃、点検及び補修)を容易とするため必要な対策の程度を表示します(等級3〜1)。
●等級は、特に配慮した措置(等級3)と基本的な措置(等級2)、その他(等級1)の違いを示しています。
更新対策(共用排水管):共同住宅のみ
●共同住宅の共用排水管の更新工事を軽減するため必要な対策の程度を表示します(等級3〜1)。
●等級は、特に配慮した措置(等級3)と基本的な措置(等級2)、その他(等級1)の違いを示しています。
5 省エネルギー対策
できる限りエネルギーの使用量を削減しつつ冷暖房を行うために、住宅の断熱措置などに対する対策についての等級です。
具体的には下記のようになります。
温熱環境(断熱等性能等級)
●暖房器具に使用するエネルギーの削減のための断熱化等による対策の程度を表示します(等級4〜1)。
等級は、下記のように、省エネルギー基準に基づいて判断します。
等級4:平成28年に制定された基準(通称「28年基準」)に適合する程度のエネルギー削減が得られる対策を講じた住宅
等級3:平成4年に制定された基準(通称「4年基準」)に適合する程度のエネルギー削減を得られる対策を講じた住宅
等級2:昭和55 年に制定された基準(通称「55年基準」)に適合する程度のエネルギー削減を得られる対策を講じた住宅
等級1:その他
エネルギー消費量
●住宅で使用する電気、灯油、都市ガスなど(二次エネルギー)を石油、石炭、天然ガスなど(一次エネルギー)に換算してどれくらい消費したかを表すものです。(等級5,4,1)
等級は下記のように省エネルギー基準に基づいて判断します。
等級5:一次エネルギー消費量のより大きな削減のための対策(基準省令に定める建築物のエネルギー消費性能の向上の一層の促進のために誘導すべき基準(その設定の基礎となる基準一次エネルギー消費量が、基準省令第10条第1項の規定により求められたものであるものに限る。)に相当する程度)が講じられている。
等級4:一次エネルギー消費量の大きな削減のための対策(基準省令に定める建築物エネルギー消費性能基準(その設定の基礎となる基準一次エネルギー消費量が、基準省令第5条第1項の規定により求められたものであるものに限る。)に相当する程度)が講じられている。
等級1:その他
6 シックハウス対策
下記の2項目について評価しています。
●住宅室内の水蒸気や代表的な化学物質の濃度を低減するための対策の基本的な手段と考えられる、 建材の選定と換気対策 の2つがどのように講じられているか。
●住宅の完成段階で室内の化学物質の濃度の実測結果がどの程度であったのか。
建材の選定
ホルムアルデヒド対策(内装及び天井裏等)
居室の内装の仕上げ等からのホルムアルデヒドの発散量を少なくする対策をとる。
具体的な対策としては、無垢材(丸太及び単層フローリングを含む)を使用する、特定建材を使用する。
特定建材とは、ホルムアルデヒドを発散する可能性のある材料として、建築基準法によりそのホルムアルデヒド放散量に応じて使用が制限されている建材の事です。
ホルムアルデヒド発散等級により、発散量の少なさを示しています。
等級3:ホルムアルデヒドの発散量が極めて少ない(日本工業規格又は日本農林規格のF☆☆☆☆等級相当以上)
等級2:ホルムアルデヒドの発散量が少ない(日本工業規格又は日本農林規格のF☆☆☆等級相当以上)
等級1:その他(天井裏等にあっては「−」と表示されます。)
換気対策
室内空気中の汚染物質及び湿気を屋外に除去するための必要な換気対策として、次の2つの対策があります。
居室の換気対策
機械換気設備(建築基準法に適合)の有無、無い場合はその他(隙間が多い伝統的な構造・工法など)を表示します。
局所換気対策
換気上重要な便所、浴室及び台所のそれぞれについて、機械換気設備、換気窓の設置の有無を確認し、表示します。
7 窓の面積
住宅の開口部の総合的効果を、開口部の面積と位置についての配慮がなされているかを評価します。
窓の面積を単純に増大させることは、地震時の構造の不安定、暖冷房エネルギー使用量や外部騒音の進入を招いたり、プライバシー確保が困難となったりするなどの問題になるため配置に留意する必要があります。
開口部の面積と位置については、次の2項目があります。
単純開口率
●居室の外壁又は屋根に設けられた開口部の面積の床面積に対する割合を「%以上」で表示します。
●開口部の面積とは、天井面も含めた開口部の面積の合計です。はめころし窓のように開放できないものであっても、光を透過する材料で作られていれば対象となります。
方位別開口比
●居室の外壁又は屋根に設けられた開口部の面積の各方位別ごとの比率を「%以上」で表示します。
●各方位とは、北、東、南、西、真上です。
●住宅の開口部は、真北・真東・真南・真西又は真上を向いているわけではありませんが、45 度までの範囲で斜め方向を向いた開口部についてもそれぞれ北・東・南・西の方向であるとみなしています。
●開口部の方向に別の建物など、日光を遮るものがあるか否かを問うているものではありません。
8 遮音対策
「足音や物の落下音」「話し声」「騒音」などの伝わりにくさを高めるための対策が、どの程度講じられているかなどを評価するものです。
足音や物の落下音などの伝わりにくさに関しては、次の2つの項目があります。
重量床衝撃音対策:共同住宅のみ
●「重量床衝撃音対策等級」または「相当スラブ厚(重量床衝撃音)」のいずれかを選択して評価・表示します。
重量床衝撃音対策等級
●上の階の床から下の階の居室に伝わる重量床衝撃音(重量のあるものの落下や足音の衝撃音)を遮断する対策の程度を表示します(等級5〜1)。
●重量床衝撃音の遮断性能を向上させるためには、床の構造や構成方法の違いに応じて、以下の対策が必要となります。
- 床の構造躯体の厚さを増加させる
- 床を重くする
- 振動を抑えるように床の端部の取付け方を工夫する
- 衝撃音を増幅させないように床仕上げ材の種類を選択する
●ここでは、このような対策のうち、その効果がある程度定量的に判断できるものについて、評価することとしています。
相当スラブ厚(重量床衝撃音)
●上の階の床から下の階の居室に伝わる重量床衝撃音(重量のあるものの落下や足音の衝撃音)の遮断の程度をコンクリート単板スラブの厚さに換算した場合のその厚さで表示します。
軽量床衝撃音対策:共同住宅のみ
●「軽量床衝撃音対策等級」または「軽量床衝撃音レベル低減量(床仕上げ構造)」のいずれかを選択して評価・表示します。
軽量床衝撃音対策等級
●居室の上下階との界床の軽量床衝撃音(軽量のものの落下の衝撃音)を遮断する対策の程度を表示します(等級5〜1)。
●軽量床衝撃音の遮断性能を向上させるためには、重量床衝撃音の場合と同じように、床の構造や構成方法の違いに応じて、以下の対策が必要となります。
- 床の構造躯体の厚さを増加させる
- 衝撃音を増幅させないように床仕上げ材に軟らかい材料を選択する
- ここでは、このような対策のうち、その効果がある程度定量的に判断できるものについて、評価することとしています。
軽量床衝撃音レベル低減量(床仕上げ構造)
●居室の上下階との界床の仕上げ構造に関する軽量床衝撃音(軽量のものの落下の衝撃音)の低減の程度を表示します。
●なお、重量床衝撃音の遮断のため有効な対策が軽量床衝撃音の遮断に有効であるかどうかは、個別のケースにより異なります。
話し声や、騒音の伝わりにくさに関しては、次の2項目があります。
透過損失等級(界壁):共同住宅のみ
●居室の界壁の構造による空気伝搬音の遮断の程度を表示します(等級4〜1)。
●空気伝搬音の遮断性能を向上させるためには、住宅や壁の構造や材料の構成方法の違いに応じて、以下の対策が必要になります。
- 壁の構造躯体の厚さを増加させる
- 壁の重さを増す
- 空気伝搬音を通しにくいような複合構造の壁を選択する
- 界壁に隙間やコンセントボックスなどを作らないようにする
- バルコニーや共用廊下に面する窓や換気口などから空気伝搬音が回り込まないようにする
●しかしながら、このような対策を総合的に評価するためには、相当程度の測定値の蓄積が必要となるため、多様な構造方法が用いられる我が国の共同住宅等について等しく評価を行うことは容易でない面があります。
●そこで、ここでは、隣戸から当該住戸の居室への音の伝わりにくさに関して、界壁に使用する構造と材料を評価対象として設定します。
透過損失等級(外壁開口部)
●居室の外壁に設けられた開口部に方位別に使用するサッシによる空気伝搬音の遮断の程度を表示します(等級3〜1)。
●一般的な住宅の場合、外部騒音の室内への侵入や、室内騒音の外部への放射に関して、外壁に設けられた窓部分が最も弱点となることが多いことから、ここでは、外壁の窓などに使用するサッシを対象とし、東西南北の方位別に評価を行うことを定めています。
●方位別に評価を行うのは、住宅の外部の騒音発生源がどの方向にあるのかによって、遮音性の高いサッシを用いるか否かの判断がなされることに配慮したためです。たとえば、南側に騒音の発生源となる工場や道路がある場合には、南側の開口部のサッシは極めて重要な役割を果たしますが、北側は、さほどではない場合も多いものと考えられます。
9 高齢者や障害者への配慮
高齢者等に配慮した建物の工夫の手厚さの程度を等級により表示します。新築時に対策が大切な、「移動時の安全性の確保」「介助のし易さ」に着目した工夫を評価の対象としています。
高齢者等への配慮に関しては、次の2項目があります。
高齢者等配慮対策等級(専用部分)
●住戸内における高齢者等への配慮のために必要な対策の程度を表示します(等級5〜1)。
●等級は、「移動時の安全性に配慮した処置」の程度と「介助の容易性に配慮した処置」の程度を組み合わせて判断されます。
●移動時の安全性に関しては、以下のものを採り上げています。
- a. 垂直移動の負担を減らすための対策
例)高齢者等が利用する部屋と主要な部屋とを同一階に配置する。階段について、手すりを設けたり、勾配を緩やかにしたり、事故が起きにくい形にする。 - b. 水平移動の負担を軽減するための対策
例)段差を解消したり、少なくしたりする。段差のある場所に手すりを設ける。 - c. 脱衣、入浴などの姿勢変化の負担を軽減するための対策
例)玄関、便所、浴室、脱衣室に手すりを設ける。 - d. 転落事故を軽減するための対策
例)バルコニーや2階の窓などに手すりを設ける。
各等級は、上記のaからdまでの対策を組み合わせて、その手厚さの程度で評価しています。
●介助を容易にするための対策としては、次のものがあり、等級3以上で求められています。より上位の等級になるにつれて、幅やスペースをより広くすることが求められるなど、余裕が増します。
- a. 介助式車いすでの通行を容易にするための対策
例)通路や出入り口の幅を広くする。廊下の段差を解消する。等級5では、通路は850mm以上、出入り口の幅は800mm以上必要で、等級4では通路780mm、出入り口750mm以上が必要です。 - b. 浴室、寝室、便所での介助を容易にするための対策
例)浴室、寝室、便所のスペースを広くする。等級5・4では浴室の短辺が内法で1,400mm以上必要で、等級3では1,300mm以上が必要です。
高齢者等配慮対策等級(共用部分):共同住宅のみ
●共同住宅等の主に建物出入口から住戸の玄関までの間における高齢者等への配慮のために必要な対策の程度を表示します(等級5〜1)。
●等級は、移動時の安全性に配慮した処置の程度と介助の容易性に配慮した処置の程度の組み合わせて判断されます。
●専用部分では、介助式車いすを用いる居住者を想定しているのに対し、共用部分では介助者の助力を得ながらも自走式車いすを用いる居住者を想定しています。
●移動時の安全性に関しては、以下のものを採り上げています。
- a. 垂直移動の負担を減らすための対策
例)エレベーターを設置する。階段について、手すりを設けたり、勾配を緩やかにしたり、事故が起きにくい形にする。等級5・4・3では出入り口のない上層階などの住戸のためにエレベーターが必要で、等級2は必ずしも必要としていません。 - b. 水平移動の負担を軽減するための対策
例)段差を解消したり、少なくする。段のある場所に、傾斜路、手すりを設ける。共用廊下に手すりを設置する。
等級5では共用廊下の床に傾斜路がある場合手すりを「両側」に設けることが必要で、等級4では「少なくとも片側」に設けることが必要です。 - c. 転落事故を低減するための対策
例)開放廊下などに手すりを設ける。
●各等級は、上記のaからcまでの対策を組み合わせて、その手厚さの程度で評価しています。
●介助を容易にするための対策としては、次のものがあり等級3以上で求められています。より上位の等級になるにつれて、幅やスペースをより広くすることが求められるなど、余裕が増します。
- a. 自走式車いすでの通行を容易にするための対策
例)共用廊下の幅を広くする。等級5では少なくとも1経路の廊下の幅員を1,400mm以上とすることが必要です。 - b. 自走式車いすでのエレベーターの乗降を容易にするための対策
例)エレベーターやエレベーターホールのスペースを広くする。等級5・4ではエレベーターのかごの奥行きが1,350mm以上、エレベーターホールに1,500mm四方の空間が必要で、等級3でもエレベーターホールに1,500mm四方の空間が必要です。 - c. 階段の昇降を容易にするための対策
例)階段の幅を広くする等級3ではエレベーターが利用できない場合少なくとも1つの共用階段の幅員が900mm以上必要です。
10 防犯対策
被害対象の強化として、開口部の侵入防止対策について、どの程度の配慮がなされているかを評価します。
開口部の侵入防止対策として、住宅の開口部を外部からの接近のしやすさと、開口部について防犯性能の高い建物部品を使用しているか否かを階ごとに表示します。